2022年11月

遠近両用眼内レンズ

メガネがいらない!?

皆さんこんにちは。毎日快適に過ごしていますか?
今日は遠近両用レンズのお話です。遠近両用と聞くと「はいはい。老眼鏡も一緒になったメガネのことでしょ?」と思うと思います。今日お話するのはメガネの話ではございません!
白内障手術を受けるときの選択肢のお話です。ですから白内障がない方は今日の話は関係ございません。これから白内障手術を受ける、家族が手術を受けるという方はぜひご一読いただいてください。
また、全然良く見えているし白内障はまだすすんでいないよと言われている方も、興味で読んでいただければ幸いですし、来る日に備えてくださってもOKです!
メガネで言うところの遠近両用ってつまり老眼鏡だ普通のメガネだって、あれこれ掛けかえる必要がなくて、ずっと1つのメガネを掛け続けていればOKってものじゃないですか。
簡単にいうと遠近両用眼内レンズっていうのは白内障手術のときに遠近両用の度数が入っているレンズで、手術の後に多くの場合でメガネがいらなくなりますよ〜ってものです。

白内障手術って?

白内障手術についてはこの記事を読んでいただければご理解いただけると思います。
◎疾患解説「見えにくいのは「白内障」かも?」»
読むの面倒くさいですって方にごく簡単に説明すると、白内障とはカメラのレンズが濁って曇ってしまう病気(加齢の変化)です。汚れたレンズ越しではきれいな写真はとれないので新しいものに取り替える必要が出てきます。そのための新しい透明なレンズに入れ替えしましょうっていうのが白内障手術になります。

様々な眼内レンズがあります

ここで問題になるのが、眼内レンズって結構高価なものでいろんな付加価値がついているんです。代表的なものでは乱視矯正のトーリック眼内レンズです。
角膜乱視がある方にトーリック眼内レンズを使うと、乱視が打ち消されるので乱視矯正をしなくてもよくなるんです。これを使うかどうかってのは実は患者さんが決めるわけではないんですよ。どの程度の乱視ならこのトーリック眼内レンズを使うべきか、どんな種類の乱視なら効果があるかってのが結構複雑で難しいものなんです。
もちろん矯正しきれないくらい強い乱視の方もいますし、主治医の判断になってくるわけです。手術を受けられる患者さんは、術後どんな見え方がいいか、裸眼で生活したいのか、本を読むことが趣味なのかゴルフが好きなのか、見え方の希望を主治医に伝えて貰えればいいと思います。
そこでよりよい提案ができるかどうかも含めての主治医のウデなんじゃないかと思います。
ここで起きてくる問題が、術後はメガネはしたくありません。若い頃みたいな見え方になりたいです!ってことがご希望の方です!そんなワガママなあなたに!こんな提案はいかがですか?ってのが今日の記事になります。

単焦点

大前提として現在、ほぼ90%以上の方は特に付加価値のない、通常の眼内レンズを使用しています。これも各企業が技術の粋を集めて開発製造したレンズでとても機能性が高いものになります。米国から輸入して使用しているものや純国産のものまで様々なものがあり、状態に合わせて主治医が選択しています。
しかし、、、
単焦点と言われる、一箇所にしかピントが合わないレンズになります。
つまり、、
日常生活では車も運転するし、ゴルフもしたいという希望の方は遠方優位でレンズの度数選択をします。そのような方はスマホを見たり新聞を読んだりする時はピントが合いません。ですから老眼鏡を使用する必要があります。
逆もしかりです。近く優位に度数をあわせた場合、手元のスマホは裸眼でよく見えるのですが、遠くのテレビがぼやけて見えてしまいますので普段はメガネを使う必要があります。

これはどちらがいいとか悪いとか言うものではありません。各患者さんがどのような生活を重視するかということに依存します。
これはどうしようもなかったことなんですが、これを解決しようと開発されでてきたものが遠近両用眼内レンズ、多焦点レンズになります。

多焦点レンズ

このような経緯があって出てきたものですが、様々な問題点がありました。
まず、遠方はみえるようにして近くはどこの位置にピントを持ってくるのかという問題です。欧米人は新聞はかなり距離をとって読みます。ソファにどっしり座ってウデを伸ばして見る感じですね。欧米人はでかいので腕も長いです。(写真、イラストを。)それに対して日本人はかなり近くでものを見ます。ですから海外製のレンズでは近くの距離が40〜50cmくらいに合わせてありました。これだと我々日本人は困ります。遠近両用なのに近くが見えにくいならあまり意味はありませんね。

後もう一つ、1つのレンズの中に遠く用、近く用のゾーンができるのでその境目では光が歪みます。それを最小にレンズ設計してくれているのですが、グレア・ハローと言われる光のにじみが強く出てしまいます。

様々な紆余曲折を経て、各企業が努力してくれたおかげで現在ではかなりよいものが出てきています。

現在主流のレンズは連続焦点、もしくは3焦点眼内レンズと言われるものです。
3焦点はそのまま、遠・中・近の3点の度が入っているので日常生活で見るべき箇所が網羅されています。連続焦点は遠方から近法までシームレスにピントがずれていくような設計になっているものです。

どんな人に使うといいの??

ここまで聞くといや絶対多焦点レンズがいいでしょ!私にもそれを入れてください!ってなると思います。僕でもそう思います。しかしそういうわけではないんです。この効果を十分に享受できる人、できない人がいます。

まずそれは眼底疾患の有無に依存します。

緑内障・黄斑変性・黄斑上膜・糖尿病網膜症etc…などの疾患を抱えておられる方は多焦点レンズは使わないほうがいいです。なんにでもメリット・デメリットはあるのですが、デメリットばかりが強調されてしまうことになり困ったことになります。日本眼科学会からも眼底疾患のある方への多焦点レンズは行わないよう指導されています。

もう一つがグレア・ハローです。
先程もちょろっと言いましたが光がにじんで見えます。企業努力でそこまで気にならない程度まで抑えられたと言われていますが、気にされる方は気になると思います。多施設での大規模なアンケートでは90%以上のかたは気にならないとの回答は得られています。

もう一つの問題。それはとても高価であるということです。

この多焦点レンズ、保険が効きません。通常、保険証を医療機関に見せて健康保険をつかって3割負担で診察・手術を受けていると思います。

選定療養と言われる歯医者さんでいうところの金歯やセラミックのように、レンズ代は各々患者さんが自己負担して頂く必要があります。
これもいくらなのかは各施設によって多少異なりますし、レンズの種類でも異なってくるので一概には言えませんが、概ね1枚10〜40万程度かかります。

白内障手術は両眼受けることが多いですし、特に多焦点レンズは両眼に入れることで効果がしっかり出るという特性上、2枚分の費用がかかるので注意が必要です。
しかし、適合する人にはその費用以上の効果をもたらすものではあります。

様々なレンズがありますが。。。

以上のように様々なレンズが存在しますし、メリット・デメリットがあります。
じゃあ自分はどれがいいのかわからないよとなりますが、それはそうなんです。そのために術前検査というものがありますし、術前のヒアリングで希望する見え方、どんな生活なのかお聞きしているんですね。
詳しくは主治医の先生とご相談しながら決めていくことが必要ですが、この記事を読んで少しでも理解をしておいてからこんな見え方、生活を望んでいますって伝えるとよいと思います。
また、多焦点レンズは選定療養という厚生労働省の認可を受けた医療機関でないと受けることができませんのでご注意ください。
もちろん当院は認可を受けていますので、ご希望の方がおられましたら言っていただければよりよい提案ができると考えています。

長い記事になりましたが結局は人による!ということです。年齢にもよります。実際お会いしてお話することでよりよい提案となりますので、気になることがあればご来院くださいませ。
ではごきげんよう。