黄斑変性でも諦めないで!

こんにちは。黄斑変性専門の院長の一尾です。(網膜疾患専門としての立場です)

「なにか見えにくいな・・・そろそろ俺も歳だしな、白内障かな〜眼科行ってみるか。」
このように思われて受診してみたら黄斑変性と言われた。何か友人や家族が言っていたのとは違うな・・・なんだか次第に見えなくなるらしい。弱ったな。
このような不安にかられておられる方によくお会いしてきました。

結論から言います!黄斑変性はよくなります!適切な治療を受けることで失明の危機から脱する事ができます!
しかし残念ながら、黄斑変性は治る病気ではありません!継続して治療を受け続けることがとても重要です!一言、黄斑変性と行っても様々なタイプがあり治療法も異なります。今から各治療について書いていきます。

眼に注射をすると言われたけれど

黄斑変性と一言に言っても様々なタイプがあります。そもそも黄斑というのは眼のとある場所の名前のことです。肘や膝、おヘソといった具合ですね。

そのある場所が「変性」つまりちょっとおかしくなってきてしまった事を言います。
ですから黄斑変性というだけでは膝が悪い人、心臓が悪い人といった感じでしか伝わりません。

ここで代表的な黄斑変性の一つである「加齢黄斑変性」について説明します。
加齢黄斑変性は日本人の失明原因の上位にいつも位置してきました。そして近年まで治療法が存在しませんでした。加齢黄斑変性になると大学病院や大病院に通院してだんだん見えなくなってしまう。。。一昔前まではこれが日常でした。このことが黄斑変性は怖いというイメージを植え付けたわけですね。

しかし、状況を一変させる薬が登場しました。

ルセンティス、アイリーアといった抗VEGF薬の登場です。

これらの薬剤はいままでほぼ何もできなかった加齢黄斑変性の方を失明から救うだけではなく、視力を回復させることができる薬でした。まさに待ち望んでいた、夢のような薬だと業界は湧いた訳です。
これらの薬剤は直接悪いところに投与しないといけません。そのために「眼に注射」というなんだか怖い方法をとっているのです。
そもそも加齢黄斑変性とはどうしておこるのでしょうか。
諸説ありますが、現時点で有力な一説としては年齢により網膜、黄斑に老廃物が溜まってくる。そしてそれを取り除くために血管が生えてくる。それが悪さをするというものです。

この薬はその血管が生えてこないようにする、生えてしまった血管を消退させる効果を持ったものなわけです。

ただ一度投与したらそれでOK!というわけではありません。血圧や糖尿病の薬と同じように一定期間がすぎると代謝されて効果がなくなってきてしまうので再度投与が必要です。
血圧の薬を朝晩毎日飲むように数ヶ月に一度程度投与することが必要な訳です。

加齢黄斑変性には抗VEGF薬が最も効果的。これは疑うことはできない事実です。
ただ、それだけ効果が高い薬なので全くリスクがないわけではないです。

ずいぶん高いみたい

これは困った問題です。

今まで何も打つ手がなく、発症したら失明してしまう病気だったわけです。各国の製薬会社や研究者が長期間研究した賜物なんです。 それだけ長い歳月をかけてできた薬なんで高いんです。仕入れるのに約15万円ほどします。
3割負担の患者さんでも5万円ですね。

これを人によっては毎月、ほぼ一生必要になってくるのです。

2022年には後発品が本邦の会社から発売され、やや安くなりましたがまだまだ負担は大きいものです。

少しでも投与回数を減少させ、かつ効果は維持させるために様々な投与方法を検討されてきました。

今現在(2022年2月時点)で最も推奨されている方法はTreat and extend法、通称TAE法です。

随分、込み入った話題になって来ました。院長の専門なだけあってつい言いたくなってしまいますが、読み飛ばして次の節に行っちゃってください。気になる人だけ見てください。

TAE法は患者さんごとのオーダーメイド治療と言っても構いません。

来るたびに注射する

これがTAE法のミソです。

具体的な例を上げて説明します。

加齢黄斑変性と診断されたらまず、できるだけ早く1回目の投与を行います。その約1ヶ月後、もう1ヶ月後と最初は3ヶ月連続で毎月投与します。

この毎月連続3回投与で最大限に加齢黄斑変性を抑え込みます。

その後はその状態を維持していくフェーズに入ります。

3回目の投与から6週間後に受診してもらいます。そこで検査を行って再発していないかどうかをチェックするとともに4回目の投与が行われます。

ここからが分かれ道ですが、4回目投与前の検査で再発している場合、6週間あけると再発するという事がわかるのでここは4or5週間での投与が再発させないために必要とわかります。
その方の場合は次回は4or5週間後の受診と投与を予約していきます。

さて再発していない場合はどうでしょうか。その場合は6週間では再発しないことがわかるので延長します。次回は8週間後に受診して検査と投与です。再発していないけれども投与が必要なわけです。

以降はこの繰り返しです。最大延長できる方はやく18週程度です。4~5ヶ月に一度の投与と言う感じです。これを続けていくことが加齢黄斑変性から視力を守る、最も有効な方法なんです。

一生ですか。。。。。。

こう思われた方もいらっしゃるとおもいます。私も研修医のころにそう思いました。

このことは難しい問題ですが、現状はやはり必要な事が多いです。自己判断で来なくなり、手の施しようがない状態になってしまった方も知っています。

経済的に難しい、体が悪く通院できなくなったなど仕方のない方もいらっしゃると思います。
その方は個別にご相談させていただきます。

恥ずかしい、怒られるのでは・・などと思わなくて大丈夫です。

何でも言ってください。その状況を打破できる最善策を提示させていただきます。

また、最近の研究では発症から最初の2年間、頑張っていただいてその後薬を一回やめてみるという方法も可能であることがわかってきました。ただその場合、約半数が再発してしまうということもわかりましたので病気の状態との検討です。判断はプロに任せてください。

良くならないものもある

これは言いたくないですし、耳障りが悪く不安になることです。

しかし、いい事だけを言っている記事は信用に足りません。何事にもいい面、悪い面があります。その両者を天秤にかけ我々は最善策を提案します。

・萎縮型加齢黄斑変性

これは黄斑(先程もでてきましたが見るための中心です)が文字通り萎縮してしまう病気です。

年齢と共に皮膚にたるみがでてくるように(必死に抗うわけですが・・・)黄斑が萎縮してしまいます。

残念ながら抗VEGF薬は効きません。VEGFは関係していないのですから。。。

怖い難病の一つです。将来的に、もちろん数十年といった期間でですが、失明に至ることがあります。真ん中が見えにくくなりますが、周辺部は比較的たもたれるので、真っ暗になることは稀です。

・放置された進出型加齢黄斑変性

これはなんとも辛いものがあります。まったくもって荒廃してしまうと手のうちようがありませんが、一刻も早く注射をすることをオススメします。

少しでも失明から遠ざけるために早くするほうがいいです。

・その他

まだいくつかの病気があります。苦しむ患者さんを救うべく多くの研究者達が日々頑張っています。彼らの頑張りを無駄にしないように日々診察能力を向上させていくべく院長も努力してます。

現状治らない病気があることは事実です。しかし彼らなりの見える量、見え方で生きています。少しでも医療者が助けになることはなにか。 それがロービジョンケアです。

当院では副院長がロービジョンケアの専門家です。県内では唯一の専門家です。

ここで話をすると終わらないので別のコラムでしっかりと書きますので、興味のある方は見てみてくださいね。

感染にご注意!

冒頭でも言いましたが、「目に注射・・・!」

怖いですよね。

実際は痛くないし採血のほうがよっぽど痛いわ言われるんですが、感染は厄介なんです。

注射は34Gという0.18mmの針でするので痛くないんです。

しかしバイキンが同時にはいると厄介です。1,2個の細菌が入っただけで硝子体は眼内炎という恐ろしい状態になります。

こうなると緊急手術が必須。最悪失明してしますこともあります。

とはいっても頻度はとても低いので過度に恐れることはないのですが、注射後の目薬、診察は欠かしてはいけない、なにか不調を感じればすぐ受診することは忘れないでいただいきたものです。

以上、黄斑変性についてざっと触れてみました。まだまだ語ればきりがないですが、これくらいにします。不安に思われた方は院長に聞いていただければと思います。